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★「金色機械」 恒川光太郎  [本★小説]

★「金色機械」
[小説] 恒川光太郎 文藝春秋(電子書籍あり)

 物語は1747年にはじまり、時間を自由に行き来して1474年に
終わる。さまざまな人間模様を描きながら、そこに金色様と呼ばれる月
に由来するらしい金色の肌と緑の光る目を持った存在が混ざる。ときに
は神のように崇められ、ときには置物のように、仲間のように。生きて
いるのか機械なのか、長い歳月を生き、死ぬことなく何代もある血筋に
仕えてきた金色様。その超人的な能力は凄まじい。

 舞台は大遊郭だったり、山奥の竜宮城と呼ばれる荒くれ者たちが遊女
を侍らせ集う根城・極楽園だったり、そして不思議な能力を持つ娘の住
む村などだ。
 さまざまな人物の生い立ち、背景、その人生。
 手を当てるだけで相手を殺してしまう遙香。その養い親の医者夫婦。
 山奥にある極楽園に攫われてきたコテ(のちに熊悟朗と名乗る)と童
女の紅葉。そこで暮らす荒くれ者の夜隼と定吉、親分の半藤剛毅。
 捕縛術の名人である同心の柴本厳信。その裏に隠されてきた秘密。
 山奥に棲む幽禅家。その伝承によれば一族は空を飛ぶ船に乗ってやっ
てきたらしい。
 人々の出会い別れる人生に金色様が介入する。

 読後は多くの人生を眺めた淋しいようなかなしいような、それでいて
奇妙に満たされた感がある。
 多くの人生が語られるがそれがどこに繋がるのか、前なのか後なのか、
読む者に記憶力を要する長編ではあるがお勧めだ。★

 


タグ:恒川光太郎
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★「スタープレイヤー」  恒川光太郎 新刊 [本★小説]

「スタープレイヤー」 
[小説・ファンタジー]恒川光太郎 角川書店(電子書籍) 新刊

 斉藤夕月(女、34歳、無職)は買い物帰りに住宅地に立っている
身長2メートルくらいの真っ白な男を発見した。籤をひけと箱を差し
出されたのでひいてしまった。と、一等が当たり、当選のベルが鳴り
響き、気がつくと異世界に立っていた。
 一等の賞品はたしかスタープレイヤー。なんのことかわからなかっ
た。なにもない道を進むと東屋があり、そこでスターボードという
なんでも願いを10個叶えてくれる装置と、ボードで呼び出される案
内人が与えられた。

 奇想天外なはじまりから一気に読ませる!
 なにもない場所でボードを使って自分の居場所から創り出す。そう、
スターボードを手にした者はここでは「神」なのだ。それをどう使お
うと自由。人を呼び出して殺してもいい。
 隣(といっても行くのに数日かかる)のスタープレイヤー・マキオ
と知り合って夕月の世界観が広がる。
 冒険もあり、戦闘もあり、楽しませてくれる。

 だけど世界を構築するのに(物語を紡ぐのに)戦闘はかかせないの
か。やはりこのリアル世界でも戦争はなくならないということかと思
ってしまった。
 あと途中まで主人公が女だとどうしても思えなくて、男だと感じて
読み進めてしまうということが生じた。
 面白くてページを繰る手が止まらない。文体もさらっとしていて読
みやすい。お勧めです。


※今回、恒川光太郎さんの作品がいくつか電子書籍でだされているの
を知って嬉しく思いました。紙の本はいいけれど、読み終わっても感
動した本は古本屋には持って行けないので溜まってしょうがなかった
ので助かります。
 電子書籍はタブレットの充電を忘れないようにしないとならないけ
れど、字を好きな大きさにして読めるのでいいですよ。過去にやった
ことがあるけれどパソコンで読むのは少しきつかったです。
 ただ今回体調を崩して臥せっていたので、横になって読もうとする
とタブレットの縦横表示がどちらにしても逆になって読めないという
不都合が生じました。そりゃもう仰向けになってボードを手で上げな
がら読みましたわよ。ページをめくるのはワンクリックで楽でしたけ
どね。腕が疲れました。
 わたしが知らないだけで自動で縦横表示が勝手にならない方法があ
るのでしょうか。
 座って読む分にはどちらの表示でも読めるのですけどね。わたしは
ボードを横にした方が1行の文字数が少なくて読み進めやすいと思い
ます。

 で、このタブレットがスターボードだったら?
                        きゃ~!
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★「虚ろな十字架」 東野圭吾 [本★小説]

「虚ろな十字架」 
[小説] 東野圭吾 光文社

 幼い我が子を強盗殺人犯に殺された夫婦を軸に話は展開していく。
その犯人は再犯だった。裁判で死刑を望み闘う夫婦。やっと死刑を
勝ち取るがそこに救いを見いだすことはない。
 離婚してそれぞれの道を歩むが、ある日、元妻が殺されたという
一報が入る。
 殺した側の関係者の話も絡み、死刑とか罪とか司法とかの重い
テーマが描かれる。
 犯人側の義理の息子は医師で、善人すぎる。だがその裏には中学生
のときに犯したある罪があった。あがないの人生を歩んできた彼。
そして共犯者の彼女はまた違う道を歩み、万引きをした物しか食べ
ない生活で、風俗で働き、赤い家具に囲まれて暮らしてきた。
自分はくだらない人間だという信念を抱えて。
 犯人側と被害者側の人間関係が丹念に描かれ、そして真実が暴か
れていく。

 暗い話なのに読みやすかった。
意外な事実が次々と提示されて飽きない。
 強盗殺人を犯しても死刑になることは稀で、すぐに釈放されて
また再犯という流れが多い。人ひとりの命の重みが軽視されている
のではないか。犯人側に有利な刑罰としか思えない現状がある。
これでは被害者側は溜まらない。
 かたや刑法であがなわず、重い十字架を背負いながら生きてきた
人がいる。
 「人を殺したら死刑」愛娘を殺された元妻の声が響く。
 さて話の展開を推理できる読者はどれくらいいるのだろう。
まず、いないと思うのだが。試してみる?

 


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