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「終わりよければすべてよし」 新国立劇場 [舞台]

新国立劇場公式
https://www.nntt.jac.go.jp/play/shakespeare-dark-comedy/


    【作】ウィリアム・シェイクスピア
    【翻訳】小田島雄志
    【演出】鵜山 仁
    【美術】乘峯雅寛
    【照明】服部 基
    【音響】上田好生
    【衣裳】前田文子
    【ヘアメイク】馮 啓孝
    【演出助手】中嶋彩乃
    【舞台監督】北条 孝



演出 鵜山仁

キャスト

    岡本健一
    浦井健治
    中嶋朋子
    ソニン

    立川三貴
    吉村 直
    木下浩之
    那須佐代子
    勝部演之

    小長谷勝彦
    下総源太朗
    藤木久美子
    川辺邦弘
    亀田佳明

    永田江里
    内藤裕志
    須藤瑞己
    福士永大
    宮津侑生



 バートラムは伯爵家の立派な若様だと見えていたのですが、段々とメッキが剥がれていき、処女のダイアナを口説くわ、王に嘘はつくわ、人を見る目もなく、散々な男であることが露呈してしまう。浦井さんがこんな役をやれるようになるなんて!
 なにしろヘレナが亡くなったと信じているラフューが自分の娘とバートラムを結婚させようとしていたのに、悪行が露見して行くにつれて態度が変化していき、ついには自分の娘にはふさわしくないと言い出す。笑わせていただきました。

 那須さんの伯爵夫人が秀逸だった。ヘレナを預かり育て、自分の娘とも呼ぶ。道化との下世話な会話もこなし、それでいて凜とした伯爵夫人の佇まい。

 ソニンさんの初初しい演技も素晴らしかった。母親のいうことをきく娘でありながら、それだけではない。きちんと王のまえで申し開きをする胆力もあるのだから。
 この物語では指輪が大事な役割を果たすのだが、その真実が暴かれていくところが面白かった。

 やはりヘレナ役の中嶋朋子さんが魅力的で、知恵もあり、人としても素晴らしい彼女を具現させていた。
 白い布を吊してある舞台装置と、その前にいるヘレナの白いドレスのドレープが美しくてため息が出そうだった。衣装さん、素敵でした。
 ラフューが辞退するほどの屑のバートラムを一途に思うヘレナの愛は大きく深く、でも観客からしたら、やめておいた方がいいのに、と思わずにはいられなかった。

 王役の岡本健一さんは瀕死の状態、回復してからの若々しさ、ヘレナの死を知ってから、そして自分がヘレナに与えた赤い石の指輪をバートラムが持っていたことで、彼がヘレナを殺害したのではないかとさえ疑う。その様々な状態の同一人物を安定した演技力で演じ分けていた。
 本当のことを言うと、王を演じている岡本健一さんは舞台上にはおらず、ただ王様がいて、お目当ての方がいないのをラストあたりで気づいて、「あれ、いない」と焦ったのでした。

 ラストで王は王冠をはずして、いち役者へと戻る。一瞬、わたしにはシェイクスピアの時代の役者さんたちがそこに並んでいるように見えました。


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「尺には尺を」新国立劇場 [舞台]




  • 【作】ウィリアム・シェイクスピア
  • 【翻訳】小田島雄志
  • 【演出】鵜山 仁
  • 【美術】乘峯雅寛
  • 【照明】服部 基
  • 【音響】上田好生
  • 【衣裳】前田文子
  • 【ヘアメイク】馮 啓孝
  • 【演出助手】中嶋彩乃
  • 【舞台監督】北条 孝


演出 鵜山仁

キャスト

  • 岡本健一
  • 浦井健治
  • 中嶋朋子
  • ソニン
  • 立川三貴
  • 吉村 直
  • 木下浩之
  • 那須佐代子
  • 勝部演之
  • 小長谷勝彦
  • 下総源太朗
  • 藤木久美子
  • 川辺邦弘
  • 亀田佳明
  • 永田江里
  • 内藤裕志
  • 須藤瑞己
  • 福士永大
  • 宮津侑生



 舞台には木の長椅子が二つと左右にはゴミが集められている場所がある。手前には水をたたえた池がふたつ見える。奥には赤黒く大きな平面の建物があり、窓と扉が開くようになっている。
 アンジェロという男があまりに真面目で法を遵守しようとするために、優秀ではあるが存在自体が孤立していることが浮き上がってきた。一瞬にして彼の仲間内での彼の立ち位置や人柄などが入ってきた。これは演技力なのだろうか。
 同じ裁く立場の人々や個性豊かな市井の人々は杓子定規に生活しているわけではなく、ある程度は清濁併せ飲んでいるようだが、アンジェロには許しがない。大目に見るということを知らないらしい。
 だがアンジェロがイザベラに魅了され、その操を奪おうとした後、ゴミの集まった場所で蹲る。厳格で四角四面の彼が正しい道から逸れて、汚れに墜ちた表現の演出は素晴らしい。
 なにせイザベラは修道女見習いであり、その清純さ、神聖さ、それでいて物怖じせずに自分の意見を言う女性なのだ。

 登場人物の女郎屋はじめ、すべての人々が個性的で、台詞もシェイクスピア独特の難しいもので、もはやすべての人が主役のような働きをされていると思った。

 ベッドトリックの直接的な場面は原作には描かれていないが、恐らくはアンジェロの家で神父に化けた公爵とイザベラ、マリアナが扉を通っていくとそこにベッドが置いてある。これもスマートな演出。
 公爵はイザベラの兄が死刑を免れたことを告げず、アンジェロがマリアナと一夜を共にしたことがばれた後、公爵は二人に結婚式を挙げるように促す。そして戻ってきたふたりにアンジェロの死刑を宣告する。
 助命を求めるマリアナ。一緒に嘆願して欲しいと頼まれたイザベラは迷うが一緒になってアンジェロの命を救って欲しいと公爵に願う。
 マリアナの夫を思う大きな愛。そしてイザベラの敵ともいえるアンジェロへの許し。
 兄は生きていたし、アンジェロも許された。

 最後に大団円かと思われたが、公爵が唐突にイザベラに半ば強引にふたりが結婚することを宣言する。
 確かイザベラはこれから神に仕える身だったはず。果たしてこれからどうなっていくのでしょうか。公爵との結婚ならあり?
 公爵がちまたの男に言われていたとおりの女たらしではないということはあるのでしょうか。
 アーメン!

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