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★「終夜」 シアター風姿花伝 [舞台]

☆メモ風感想です☆


 登場してきたヨンと妻のシャーロットは情熱的で、ヨンの弟アランと妻のモニカも多少夫が高圧的で妻がびくびくしているのをのぞけば、まともなご夫妻に見えた。
 ところが母親の骨壺とヨンの前妻の娘と繋がっている電話を切らずに置いてある状態がその場の地場を狂わせたのか、いささかの酒がそれぞれの心の奥の秘密をあぶり出したのか、愛が憎悪に変わっていく。
 口から出た言葉は話す相手によって食い違う。どちらが本当なのか、どちらも嘘なのか。
男と女の関係はいろいろだ。ましてや結婚し、子ができて家族となると複雑で手に負えない。
 ヨンの妻シャーロットの見事なまでの絡みつく憎悪。ヨンは応戦するがやがてそれは色濃い疲労と諦めになっていく。
 不思議なもので、シャーロットが夫を批難し叫び怒鳴るほどに、観ているこちらには愛してると言っているように思えてきた。

 母親に愛されずに育ったヨンとそうではなかったアラン。ヨンは母の亡くなった今でも愛されたいと願っているように見えた。

 4人のなかで一番おとなしく、まともそうに見えたモニカだが二十代の恋人がいることがわかってくる。今は幸せだという彼女。アランはそれに嫉妬し、行かないでくれと縋り、そのうちに心許なく母を求めるように泣きじゃくる。だが母の愛はなく骨壺が見守るのみ。また母の代わりになる女もいない。

 話が進むにつれて世間的な感じのいい仮面は剥がれ落ちて、4人それぞれの本音が見えてくる。それとともに全員に狂気が垣間見える。

 ラストでモニカがもうひとつ真実の爆弾を破裂させて、アランとモニカの関係は出口を失う。ヨンとシャーロットはたがいに別れると言い張っているが、それがどうなるのかはわからない。

 母親の骨壺が割れて、収拾のつかない状況が訪れる。夜は明けるのか、明けないのか。


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 モニカが子供が小さかった頃に使っていた服をヨン夫妻の子供に使ってと持ってくる。それを使って、モニカが一枚ずつ台に並べたり、アランがそれに顔を埋めて嘆いてみたりする。印象的な上村聡史さんの演出だった。

 シャーロット役の栗田桃子さん、ずっとテンションの高い演技で迫力が凄かった。

 ヨン役の岡本健一さん、50歳の疲れたような男を演じて新境地を開いた。まさかここまでできるとは想定外。

 モニカ役の那須佐代子さん、ふんわりとして上品で、でも狂気の量は多かった。
内にこもった熱量。丁寧な演技。

 アラン役の斉藤直樹さん、高圧的な男から母を求めて泣きじゃくる少年のような演技、振り幅が大きい。

 改めて言う必要もないけれど、4人とも素晴らしい役者さんだった。


 こぢんまりとした風姿花伝の劇場は、観客への細やかな心遣いが感じられた。長時間の観劇にも辛くならない座席のシートクッション。おいしい珈琲の販売と期間ごとに変わるお菓子。
 上質な作品と上質な役者さんとスタッフ。演劇を観たい人たちにやさしい劇場だった。


 ★公式サイト http://www.fuusikaden.com/nattvarden/index.html


    ですが、10/27(日)が千秋楽だったので、消されてしまうかもしれません。



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